小さな出版社

私たちは、小さな出版社です。

 

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なぜ小さい出版社なのかというと、まず、自分たちが作りたい本しか作らないと決めているからです。

 

それから、もちろん、自分たちができる規模のことしかできないから、でもあります。

 

自分たちにできることは、本作りです。

 

でも人も時間も限られています。もちろん能力も。

 

ですから、普通の出版社のようには、機敏に動けません。

 

普通の出版社というのは、たくさんの本を矢継ぎ早に出すことができる、体力のある「小さくない」出版社のことです。


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日本の出版業界では、本は値引販売をしません。書店は、本を買取らなくてもよいし、売れなければ返品すれば良いことになっています。

 

これは、再販制と委託制といって、「取次」が支えるシステムです。

 

このシステムの下では、出版社は、次々と新しい本を市場に出すことによって、書籍を貨幣のように回転させることでキャッシュフローを維持しなければなりません。

 

そのためには、大きな資金とたくさんの編集者が必要になります。

 

言葉を変えると、「売るため」に本を作らなければならなくなっているのですが、そのためには、より多くの読者に「売れる」ような本をつくる必要があります。

 

そのためには不安感とか、優越感とか、より低級な欲望にアピールするように読者を少しくらい操作してもやむおえないと考えているふしもあります。

 

もちろん、そういう出版社はごく一部でしょうし、表現の自由が保障されていますので、それはそれで全然構わないことではあるのですが。


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これに対して、売るために企画した本ではない、作りたい本だけをこだわって作る、小さな出版社を始める人も出てきました。

 

いわば出版事業のレジスタンス運動家です。ただ、本は儲かる商売ではないため、兼業をしなければ商売を維持していくことができないことは事実のようです。

 

とはいえ、そうした「小さな出版社」を作るのは、出版の業界で長年編集の仕事をしていたような人に限られています。


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これに対して、筆者のバックボーンは、システム屋です。

 

長年、外資系のIT企業で、基幹業務のアプリケーション(基幹システム)を作ってきました。

 

アプリケーションのデザインについては、自信があります。

 

でも、出版業については、素人です。

 

しかし、書籍のコンテンツ開発も、ものづくりと言う点ではアプリケーションの開発と変わないはずだと思っています。

 

実際、今、最初の本を作っているのですが、本を作る作業は、システムを作るのと同じくらい、楽しいです。


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本において、アプリケーションのユーザー機能に相当するものは、読者による読書体験です。

 

デザイン思考でコンセプトとデザインを作り、機能要件を明確に定義し、アジャイルでプロトタイプを作り、必要な機能が実装されていることをテストを繰り返して検証します。

 

小説の場合は作家がデザイナー兼プログラマー、編集者がプロダクトマネージャーになります。

 

システムの場合は、一旦コーディングが出来上がってしまってからデザインを大幅に変えるのはほぼ不可能ですが、小説の場合は自由自在です(!)

 

とはいえ、本を作るのにも、システムを作るのと同じくらい、時間がかかります。


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一冊の本を、読書体験をもたらすアプリケーションであると考えると、機能改善のために読者の声を取り入れて何度も改訂を繰り返し、長く販売しつづけるようなものを作る必要があります。

 

また、一冊の本を出すという、ひとつのプロジェクトだけに注目するのではなくて、著者の一連のコンテンツ発信で社会にどのような影響をもたらしたいかと言う観点でのプログラム全体の設計も必要になります。

 

著者の世界観に共感して、著者の活動にコミットすることは当然の前提です。

 
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会社の業務は、少数の基幹システムがあれば、回って行きます。

 

大企業を支える基幹システムを作るためには莫大なコストがかかりますが、幸いなことに、本を作るときは、コンテンツのスケールがどんなものであれ、かかるコストに差はありません。

 

私たちは、人も時間も限られているので、少数の基幹システムに相当する本を作ることにしか興味がありませんし、そういう本を作っていきたいのです。

 
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上に書いたような内容を踏まえて、「小さな出版社」のビジネスモデルのイメージ図を描いてみたのが、以下の図です。

 

 

これから、システム屋の本づくりについて、このブログで報告してしていきたいと思います。


更新は不定期になると思いますが、どうぞよろしくお願いします。